2011/02/14

Visit Japan 2011

ちょっと古い話だが、昨年の5月17日、前原大臣、中原政策官、長谷川座長と5分野の取りまとめ委員が参加して、第13回国土交通省成長戦略会議が開催された。「観光立国日本」にむけてのペーパーも上っている。

Source:第13回国土交通省成長戦略会議について
Source:国土交通省成長戦略(観光分野報告書) (pdf)

他にも色々とペーパーが上っているが、平成19年にまとめられた「観光立国推進基本計画」であれ、昨年の「国土交通省成長戦略(観光分野報告書)」であれ、全くと言っていいほど欠けているものがある。

Source:観光立国推進基本計画 (pdf)

それは、日本を訪問してほしい外国人観光客の姿、現状が全く語られていないことだ。

「国土交通省成長戦略(観光分野報告書)」の8ページめに「2. メディア戦略」がある。
2-1.新しいメディアを活用した海外プロモーション
1)現状の課題・問題点
・海外プロモーションにおいて、ブログ、ツイッター等の新しいメディアが十分に活用されていない

2)課題に対応した政策案
②有力ブロガー等、いわゆるソーシャルメディアを活用した情報発信の手法を海外プロモーションに活用できるかについて調査・検証する。外部専門家の意見を踏まえた広報の充実、ソーシャルメディアの活用を見据えた訪日外国人旅行者に対するアンケート調査の実施等、費用対効果の高い新しい広報戦略を構築する。

[クリアすべき問題点]
・有力ブロガー等を活用した情報発信の手法については、非制御性等のサイバーメディアの特性を考慮した慎重な検討が必要である。
と、ツールの話ばかりだ。プロモーションと言うOne wayの話ばかりであって、Two wayの話やそれを如何に育成するか、如何につなげ、拡散するかという話はない。

こういったツールを活用して訴求しようとする日本を訪問してもらう外国人旅行者の現状や行動に対する考察はない。彼らが使うメディア、スペース、サイトを調査すべきとは一言もない。Visit Japanのポータルサイトへのアクセスユーザに対して、サイト・コンテンツ評価やフィードバックを聴くビジター調査も言及されていない。細部に入り過ぎるかもしれないが、どのようなコンテンツを発信し、日々更新すべきコンテンツをどうやって収集、取材、制作するのか、会話の糸口をどう切り開き、どうつなげてゆくのかなどもない。

上のようなメディア戦略、すなわち、既存のコミュニケーションをオンライン化、ソーシャル化するだけの検討、ツールの検討では全く前に進めない。にもかかわらず...。

さて、1月26日、2010年 12月推計値 10年10月暫定値というリリースが出ている。それによると、
訪日外客数、過去最高の861万2千人
中国、タイ、シンガポール、フランス、マレーシア人訪日客は過去最高
2010年の訪日外客数は、これまで過去最高であった835万1千人(2008年)を 26万1千人上回り、前年比26.8%増の861万2千人となった。
 とある。

Source:日本政府観光局(JNTO) 統計報道発表資料 2010年 12月推計値 10年10月暫定値 (pdf)

リーマンショックからなんとか回復してきたようだ。ただ、日本の観光政策の目玉であった「2010年までに訪日外国人旅行者数を1000万人にする」という目標には届いていない。その未達に関するリリースはない(と思う)。もし、どこかにあるのならご連絡ください。

中国人への個人ビザ発給という埋蔵金を掘り出し、切り札を抜いたにもかかわらず、目標未達。そして、最初の目標が未達にも関らず2013年までに訪日外国人旅行者数を1,500万人、2020年初めまでに2,500万人、将来的に3,000万人を目指すという2010年6月18日の閣議決定は変わらないのだろう。

ま、未達でも責任を取る人間は何処にもいないのだから、閣議決定を変える必要もないわけだ。

さて、CMO Councilのレポートに「Marketing Ecosystem Effectiveness」がある。その中に、Visit Londonのケーススタディがある。2011年に予定されるロイヤルウェディング、2012年の夏のオリンピック開催に向けてVisit LondonのWebサイトへのアクセスを今の10倍にするためのソリューションが取上げられている。今のレベルはどれくらいかと言うと、年間で1.2億ページビューだそうだ。

Source:CMO Council / Unify to Multiply: Marketing Ecosystem Effectiveness (要登録)

月1,000万PVを10倍し、年間12億PVを目標とするVisitLondonと、1,000万人未達に終わったVisitJapanのWebサイトをのぞいて見ると下のようになっている。
競合として、比較するには差があり過ぎるのだが、VisitLondonのWebサイトと何が違うかというと;
まずユーザ登録がある。登録すると、e-newsletterが来るし、いろいろな優待券やマップやガイドもタダで手に入る。
  • Email Newsletters - Sign up and be the first to know about all the latest happenings in London
  • Special Offers - get more out of London for less
  • Competitions - try your luck in one of our many competitions
  • Maps - Download a map and start Exploring London
  • Guides - Get more with your Eat, Shop and Visit Guides
次に画面下にある各種機能が満載のツールバーがある。
  • Webコンテンツの翻訳
  • Webコンテンツの共有
  • RSSフィード
  • Flickr
  • YouTube
  • Facebook
  • Twitter
そして、モバイル版もある。

さて、VisitLondonとVisitJapanのWebトラフィックをGoogle Trendsで見ると以下の通り。VisitJapanのトラフィックは横軸に重なっている。
Alexaで見てもこんな感じだ。こちらは横軸よりもちょっと上に顔をのぞかせている。
世界中のインターネットユーザ、潜在的な訪英観光客の行動、利用サイト、ツール、サービスを理解し、必要な機能・ツールを装備したWebサイトを運営し、各ソーシャルメディアスペースで相応の会話を行い、これほどのWebトラフィックを獲得し、競合としてお手本にすべきVisit Londonの戦略、施策、活用システムの調査やフィードバックを一体、何処が、どのようにしているのだろう?本当に知りたい、一人の納税者としても、一人のマーケターとしても。

昨年8月、AviationWeekのBlogがDeltaについて書いている。中でDeltaの予約、販売、顧客対応のVPであるAllison Ausbandのコメントがある。
Delta decided to take the plunge into social media because that's the way the world is going, says Ausband.  "People are now living off their mobile phones, which allows them to vent when need to vent anytime.  Clearly, knew we needed to be in the space," she observes.  "We didn’t want to be left behind, because it's the way the world is going."
「人々や世界が向かっているのがソーシャルメディアだ」という理解があり、ソーシャルメディアラボを立ち上げたそうだ。

Source:AviationWeek Blog / Step Into Delta Air Lines' Social Media Lab

こういった理解、顧客が生活するスペースを分かっていれば何をすべきか見えてくる。しかし、顧客を知ろうともしないのでは、誰もいない荒野に大声を張り上げているだけだ。予算を垂れ流しているだけだ。

少なくとも各種調査に予算を支出すべきだと思うが、いかがだろうか?

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