2011/02/07

Global Head of Digital Marketing and Social Media

Pete BlackshawAd AgeによるとFMCGジャイアントのNestleが、NielsenとMcKinseyが共同出資しているNM InciteのCMOであるPete Blackshawをデジタルマーケティング+ソーシャルメディアのヘッドとして3月1日から迎えると伝えている。

今後、彼はMarketing & Consumer Communication部門長のTom Buday、そして、Corporate Communications部門長のRudolf Ramsauerの下で活動し、報告するそうだ。

Source:AdAge / Nestle Hires Pete Blackshaw as Global Digital Chief

Nestleと言えば昨年4月に取上げたGreenpeaceのキャンペーンが記憶に新しい。

参考:Greenpeace Campaign Against Nestle (Online Ad 2010/04/19)

株主総会に合わせて、会場周辺での実力行使、Email、Twitter、Facebook、YouTubeなどで行われていたパーム油の使用禁止キャンペーンにより、サプライチェーンの見直し、パーム油円卓会議への参加、果ては会長によるビデオ声明にまで追い込まれたNestleが、1年かけて出した答えがこれだ。

YouTubeにアップされたビデオの削除要請、Facebookのコメント削除警告など、火に油を注ぐ対応しかできなかったNestleが出した答えが、部門新設と彼だ。


それまでNestleに「Digital Marketing & Social Media」といった部門はなかったはずだ。新しい部門を立ち上げて、そのトップに昔PlanetFeedback.comをやっていたBlackshawを据えるわけだ。

既存のMarketing & Consumer Communication、Corporate Communicationsに数多あるであろう下部組織・部門では昨年のブランド危機に対処できないことが証明された。その後、Nestle社内で行われたのは、まず、新しいメディア=オンライン、ソーシャルメディアのパワー、波及力、拡散力の分析であり、1対Nとは真逆に近いP2Pといったコミュニケーションチャネルや信頼・共感・協力を増幅するチャネルの把握、そして既存レガシーメディアのOne Wayに対するTwo wayコミュニケーションとの対比、ソーシャルメディアを構成するP2Pの人間つながりを把握した上で、今後の見通しやあるべき対応・組織・リソースが議論されたことだろう。

その結果、部門新設が決定され、Blackshawが選ばれた。1年という長いようで短い期間にどれだけの時間が費やされたのだろう、マーケティングや広報といった上位部門だけではなく、経営層で。

Nestleは、巨額の広告・マーケティング予算を支出し、どこにもでも顔を出すP&GやUnileverと比べると、あまり姿の見えないブランドだ。だから、まずGreenpeaceがパーム油で最初に標的にしたのもUnileverだった。Unileverは2009年にさっさと問題視されたSinar Masとの取引を中止したため、二の矢に選ばれたNestleが火だるまになってしまった。

この危機意識のなさはマーケティングや広報といった上位部門だけではなく、経営層が火種なのだから。パラダイムシフトを理解、把握するブランドと、していなかったブランドの差は途方もなく深く、広い。また、火傷から学ぶブランドと、学ばないブランドの差はこれからも開いてゆく。担当部署ではなく、経営層の理解が不足し、危機意識のない場合はとくに。

ツール主導で先走りがちな担当部署を抑え、組織的な改革と外部からのリソース注入により風通しのよい横断組織、あるいは組織新設に至るまで、企業の根幹を変えるのは経営層、CEOでしかあり得ない。いくら担当部署を監督する役職者が理解を示していたとしても、CEOの理解、決断がなければ、その企業はこれからのビジネスに脆弱性がついて回る。理解を示す役職者がいても、彼がCEOを動かさなければ企業は何も変わらない。

特に、担当部署が実施するOne Wayコミュニケーションのオンライン化、ソーシャル化を目指すだけの施策を見るにつけてもそう感ぜざるを得ない。例えば、企業広報部、グローバルブランド管理部、広告宣伝部、コーポレートなんとかといった組織そのもの、あるいはその下部組織を、根幹から変革し、担当分野や上下関係を変え、名称もデジタルとか、インタラクティブとか、ソーシャルメディアへと変えるのはCEOしかいないと思うのだが...。

それとも、やはり、他山の石ではなく、Domino Pizza、UA、Nestleのように業績やブランド価値・評価が実際に傷つかない限り、学ばない、学べないものなのだろうか、中でも日本企業と、そのCEOは...?

参考:Open Letter to CEOs in Japan (Online Ad 2010/08/17)

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