2010/07/30

Global CEO Study from IBM

2004年から2年ごとに行われてきたIBMの「Global CEO Study」の2010年版が出ている。

全世界1,541人の一般企業CEO及び公共機関リーダー達のインタビューから導き出した3つの洞察、示唆の中から次の2つを取上げてみたい。
  • 組織に創造性を発揮させるリーダーシップ
    創造性を備えたリーダーは、常識を覆すようなイノベーションを実現し、時代遅れとなっているやり方を捨てる。
    さらにCEOは、柔軟で創意に富んだ発想で、自身のマネージメント・スタイルおよびコミュニケーション・スタイルを組織に広めている。特に、次世代を担う社員、パートナー、顧客との関係強化が、こうした取り組みの主要目的だ。

  • 顧客接点を新たな発想で作りかえる
    グローバル化の進展とともに、世界中の情報が入手しやすくなった。これにより、顧客の知識は増え、多数の選択肢を持つようになった。CEOは、常に顧客と会話し、さらには顧客とともに商品・サービスを創りだすことこそが、他社との差別化をもたらすと考えている。
Source:IBM / Global CEO Study

CEOは、常識破壊が多様な面で進むと予想し、新たなる経済環境は従来よりも変化が激しく、不確実かつ複雑で、従来とは構造的に異なるものになると認めている。

だから、
「デジタルネイティブである次の世代は、政治、公共機関、そしてビジネスのやり方に革命的な影響を及ぼすだろう。市民は変革を推進し、社会を根本的に変える。それは進化というレベルではない」
Peter Gilroy, CEO, Kent County Council

「運航乗務員を社内のコミュニティに参加させるためには、バーチャルなコミュニケーション環境が必要だ。若い世代の社員は、まったく新しいコミュニケーション方法を求めている。多様な社員を一つにまとめるには、世代を越えたコミュニケーション戦略が必要だ」 
David Cush, President and CEO, Virgin America Airlines

「技術はすでに顧客の行動に影響を与えている。顧客は最先端の技術を使って四大陸を駆け巡り、商品の価格を調べている」
Michael Ward, CEO, Harrods
と、CEO達のコメントには、デジタルネイティブとか、新しいコミュニケーション方法だとか、顧客が先導する技術革新に言及している。

そして、Virgin AmericaのCEOのコメントにある「運航乗務員」とか、「若い世代の社員」を、「現在の消費者、ユーザ、顧客」と読み替えれば一層、納得がいく。

最後に、組織に創造性を発揮させ、顧客との接点を新たな発想で作りかえるCEOには、日本のグローバル企業のCEOも入っていてほしい。

2010/07/29

Samsung Customer Centric

Corporate Social Media SummitにおけるSiemensのスライドを紹介したばかりだが、

参考:Siemens Monitoring (Online Ad 2010/07/27)

Samsung USAのSocial Media ManagerであるEsteban Contraresからも資料が出ている。Source:SlideShare / Twitter@Samsung Customer Centric Approach to Social Media

「企業だけではなく、顧客にも価値を提供する」というビジネスゴールを達成するためのマーケティングがあり、ソーシャルメディアがカバーするコミュニティ(ケア)、エンゲージメント、リスニングに分けて説明するなかで、特にTwitterを取上げている。

スライド最後に、「Do」と「Don't」を2ページにわたって上げている。それぞれ25項目が挙げられているが、例えば広報といった既存組織がこれまでやってきたことと重ね合わせてみると、一部は重複するが、それ以外はまったく重複しない項目だ。そのまったく重複しない項目を既存の広報組織が担当するには、マインドセットを切り替える必要がある。

消費者・ユーザと同じ高さの目線から、対等でオープン、双方向の会話を行うマインドセットがない限り、結局、「Don't」で括られる各項目の過ちを犯してしまうだけだ。新しいマインドセット、顧客に提供する価値、そして、対応する組織がなければ、Twitterアカウントをblockされることになる。

2010/07/28

Rebranding BP by Greenpeace

Greenpeaceから、「彼らの汚いビジネスにマッチしたロゴをデザインしてBPをリブランドしましょう」というメールが来た。

サイトへ行ってみると、「Best Rebranded Logo」「Best Illustration」「Best Wildlife」「Best Slogan」という4つのカテゴリがある。それぞれに複数の候補作品が上っており、好きな作品に投票すればいい。「Best Rebranded Logo」カテゴリで最優秀賞を獲得した作品が、Greenpeaceのキャンペーンに使われる予定だ。
Source:Greenpeace / Behind the Logo

BPに関しては3回取上げてきた。BPロゴに似せて黒く汚れ、原油が流出しているようなロゴを掲げるTwitterアカウントはもう18万人以上のフォロワーを獲得している。参考:BP Reputation Management Challenged (2010/05/26)
参考:BP Reputation Management Challenged -2 (2010/05/28)
参考:BP Reputation Management Challenged -3 (2010/06/01)

BPGlobalPRというTwitterアカウントを放置しておいたBPに、今度は、より強大なGreenpeaceが新しいロゴを選出して、今後のキャンペーンに使おうとしている。

こんな状況に即した危機管理計画を持っている企業・ブランドがどれほどいるだろうか?

ブランドを所有したり、管理したりしているのは、もう企業ではなく、エンパワーされた消費者だ。その消費者が集うスペースに参加さえしていない企業は、いかなる危機管理計画をもっていようと意味がない。消費者と会話のできない企業に危機管理計画があっても仕方がない。

参考:Crisis Management (Online Ad 2010/07/22)

追記
今朝、Greenpeaceから来たemailによると、ロンドンにある46のガソリンスタンドがGreenpeace活動家たちによって様々な新しいロゴマークに差し替えられたそうだ。

Source:Greenpeace UK

2010/07/27

Siemens Monitoring

6月にNYで開催された「Corporate Social Media Summit」に関して2度紹介したことがある。

参考:Corporate Social Media Summit (Online Ad 2010/04/15)
参考:Corporate Social Media Summit -2 (Online Ad 2010/05/07)

その「Corporate Social Media Summit」に参加していたSiemensの資料がSlideShareに上がっている。
Source:SlideShare / Siemens Leveraging Social Media Data

上のプレゼン資料の中に、
  • センチメント分析、シェア
  • Blog、Forum、Twitter、News系バスの時系列シェア
  • バズ出現率、シェア
などのグラフがある。

ま、全世界40カ国のWebサイトへのアクセス・ビジター調査を毎年、毎月やっているSiemensなら当然のことだが、ちゃんとオンラインのバズモニタリングをやっていることが分かる。

B2Bの代名詞のようなSiemensにしても、顧客企業や最終顧客の声に耳を傾け、多様なコミュニケーションメッセージの評価、フィードバックを獲得し、可能であればインフルエンサーを特定しよう、次のキャンペーンに活かしていこうということだ。

Siemensではなくても大多数のグローバル企業にとって、Webビジター調査やモニタリングは基本中の基本だが、さて日本のグローバル企業では...?

2010/07/26

Business Social Networking

Regusから「A Global survey of business social networking」というレポートが出ている。

全世界100万人の経営者、役職者DBを持つRegusが、ソーシャルメディアをどのように活用し、ソーシャルネットワーキングを通して新規顧客獲得にどれほど成功しているのか、そして、ソーシャルメディアに対するコミットメントを調査したものだ。調査回答者は15,000人以上となっている。

それによると、
  • 全世界で半分から四分の三の企業が様々なソーシャルメディアを利用しており、
  • 40%はソーシャルメディアを活用して新規顧客を獲得している
  • 27%は既存顧客へのリーチおよび保持に活用している
  • しかし、34%はまだソーシャルメディアの可能性を信じていない
  • ソーシャルメディア活用は企業規模には関係していない
  • ICT、小売、メディア&マーケティング関連企業は平均以上の利用
  • 製造、金融、ヘルスケアの利用は平均以下
となっている。

各国ごとのソーシャルメディア活用インデックスを見ると、インド、中国が飛びぬけており、それをメキシコ、蘭、独、西、南アの第二グループ、豪から仏までの第三グループが追っている。英、日はその後に続いている状況だ。
新規顧客開拓、獲得にソーシャルメディアを活用できている国を見ると、これまた日、英は第三グループの下位、あるいは第三グループを追っているような状況だ。
Source:Regus / Social Success?

ソーシャルメディア活用のインデックスを見ても、新規顧客開拓にソーシャルメディアを活用できていない面でも、日本の低さがよく分かる。

日本国内の話だけで終わればいいのかもしれないが、ことは国内だけに限らない。英語を自由に駆使するデジタルネイティブがこれからの主役に躍り出る直前の今、彼らのピアネットワークが国境を越えてつながり、グローバルな会話が始まりつつある今、彼らがB2C・B2B企業、そして家庭の中であらゆる製品・サービスの購買判断を下す消費の王様になろうかという今、国内だけの話をしていて良いのだろうか?

なお、ソーシャルメディアは一時のブームで、「ビジネスに直結する効果はない」といったコメントがあちこちで聞かれていたが、「40%が新規顧客を獲得」している事実を前にしてどんなコメントが聞かれるのだろう?

2010/07/23

Mom Influencing and Influenced

先週、BabyCenterというニッチ・バーティカルサイトを紹介した。

参考:Blog and Vertical SNS (Online Ad 2010/07/14)

そこが、「The BabyCenter 2010 Mom Influencer Report」を出している。このレポートでは、Field Experts、Lifecasters、Pros、Audience、Butterfliesという5つのセグメントにソーシャルマムを分類している。

  • Field Experts
    子育て中心の在宅主婦層
    子育てアドバイスをソーシャルメディアを使って発信する。大きなママネットワークを持ち、実体験に即したアドバイスやレコメンドを行う。ソーシャルマムの8%を占める。33%のインフルエンスを持ち、BabyCenterといったコミュニティでは44%のインフルエンスを発揮する。
  • Lifecasters
    ミレニアルママ
    乳幼児を抱え、ソーシャルメディアを活用していつもコネクトしている。子育てだけではなく多くのトピックで相談される。Facebookで最も積極的に活動しており、大きなユーザネットワークおよび「Likes」を獲得している。ソーシャルマムの8%を占める。34%のインフルエンスを持ち、Facebookで47%のインフルエンスを発揮する。
  • Pros
    プロとなったママBlogger
    幼児を抱えたGen X世代でプロのBloggerとしてTwitterやBlogから膨大なネットワークにエンタメやお役立ち情報を発信する。ソーシャルマムの2%を占める。11%のインフルエンスを持ち、Blogで89%、Twitterで69%のインフルエンスを発揮する。
  • Butterflies
    リアルでも忙しい若い社会人
    出産経験がなく忙しい中、Facebookなどで友人とつながり、BabyCenterなどのコミュニティで妊娠、出産情報・アドバイスを受けている。ソーシャルマムの16%を占める。全体として7%のインフルエンスを発揮する。
  • Audience
    助言・アドバイスを聞く大多数のソーシャルマム
    乳幼児から学生まで多様な子供を抱えるママ達で役に立つ情報を求め、質問をし、製品レコメンドを受け入れる。ソーシャルマムの66%を占める。全体として15%のインフルエンスを発揮する。
Source:The BabyCenter / 2010 Mom Influencer Report

影響し、影響される姿は何も女性に限った話ではない。妊娠、出産、子育てといった女性特有の事象に限定されるのではなく、これは車、TV、PCなどに興味をもったり、こんど購買しようという意思を持ったすべての消費者・ユーザ達がそれぞれに影響し、それぞれに影響されるパターンと同じだ。

インフルエンス度数は変動するだろうが、上のセグメント分類や、影響・非影響度、信頼関係、製品推奨といったパターンはどんなケースにも適用される。そして、彼女たちの言葉、コンテンツ、コンテキストが影響し、影響されていることも女性だけの話ではなく、男性も、B2Cでも、B2Bでも同じだ。

ここには広告メッセージはない。ピアの体験、評価、推薦、そして個人ネットワークがある。そのピアやネットワークで共有してくれるメッセージでなければ届かない。

2010/07/22

Crisis Management

Goldman Sacksであれ、BPであれ、Toyotaであれ、いかなる企業も企業としての存在が危ぶまれる危急存亡の時を迎える可能性がある。

そしてその対応を間違えると以下のようなビデオの餌食になってしまう。


つい先日、ソーシャルメディア対応を紹介したばかりのJohnson & Johnsonだが、小児用タイレノールのリコール問題で揺れている。

参考:Johnson & Johnson in Social Media (Online Ad 2010/05/06)

J&JのCEOは米議会の公聴会で証言させられたし、CNNによれば刑事告発、起訴の可能性もあると伝えている。なんだか、ついこの間、Toyotaのリコールに関連して演じられたシーンが再現されているような気がする。

Source:Pharmalot / How Can J&J Recover From The Recall Scandal
Source:CNN / Tylenol recalls referred to FDA crime division

さて、IPR (Institute for Public Relations)から、Crisis Management and Communicationsというレポートが出ている。2007年10月30日付けなのでもう3年も前のものだが、基本中の基本が列挙されている。

その中に、「コミュニケーションチャネル」というセクションがある。危機発生時には専用Webサイトを立ち上げて必要情報を供給し、社員などに情報提供するイントラネットを立ち上げ、そして、社員および他ステークホルダーに情報提供するマス通知システムを準備することが挙げられている。
そして、「初期対応」セクションの中には、「インターネット、イントラネット、そしてマス通知システムを含み、利用可能な全てのコミュニケーションチャネルを利用すべし」とある。
Source:Institute for Public Relations / Crisis Management and Communications

3年前に作成されたため、このレポートにはソーシャルメディアが考慮されていない。揚げ足取りのビデオ、悪意のこもったSMやBlog、Facebook、Twitterなどでの書込み。それらが共有されるスピードや広がりが考慮されていない。そして、それら膨大な露出と共有により、生起されるブランド価値の毀損、ブランド損失の大きさが考慮されていない。

また、企業・ブランドのファン、ロイヤルユーザといったホワイトナイトに活躍してもらうプランが見えない。Toyotaがリコールでやり玉にあげられていた時、米国のトヨタ車オーナーが何を言い、書いていたのか知っていますか?大半のオーナーはトヨタ車の信頼性、安全性、経済性、乗りやすさなどブランド体験を書き連ね、リコールは一部のものだとトヨタを擁護していた。金では買えないそんなオーナー、ユーザの声を危機発生時にどう活かせるのか、どう活かすべきかのプランが見えない。また、危機が鎮静化した後のブランドレピュテーション回復時にもこういったホワイトナイトユーザに活躍してもらうステージがあるはずだが、そういった面でのプランも検討されていない。

この3年間の間に起こったパラダイムシフトは、企業・ブランドが活用していたコミュニケーションチャネル自体を変革し、ソーシャルメディアチャネルの存在を大きくクローズアップした。このソーシャルメディアチャネルに対応する新しい危機管理計画が必要だ。そして、それは国内向けというよりも、日本国内以上にソーシャルメディアが席巻している海外市場を第一に考えたものであるべきだ。

2010/07/21

Latest Smartphone Survey June 2010

4,028人の消費者を対象に行われたChangeWaveのスマートフォン調査がある。

これからの90日間にスマートフォン購買を予定している消費者の割合は6月時点で16.4%にまで伸びている。1年前、AppleのiPhone 3GSリリースで押し上げられた14.4%という割合をも越えたブームになっている。
そのスマートフォン市場を牛耳るのはどこかというと、これはAppleが52%で圧倒している。5月の調査から21%ポイントも飛躍的にアップしている。それに続くのはHTCで7%ポイントアップの19%になっている。

それに比べると、Motorola、RIM、Palmは見る影もない。特にPalmの割合は「0%」だ。
Appleに対抗するAndroid系スマートフォンメーカーの勢力図が塗り替えられてきたということだ。昨年12月、今年5月の調査でトップに立っていたMotorolaが失速し、それをHTCが軽く追い越している。
ただし、4.4インチ画面を持つDroid Xが上の図を塗り替えることになるのかもしれない。

Source:ChangeWaveResearch / Latest Smartphone Survey
Source:PCWorld / New Droid Phone Coming on June 23

それにしても日本メーカーの姿がないのは寂しいですね。

携帯ユーザの満足度リストに台湾のHTC、韓国のLGとSamsungが顔を出しているが、日本メーカーというか、出資は対等だがEricsson出身者がトップなどを務めるSony/Ericssonが9位に顔を出すだけだ。
こういったリストに限らず、国力でも、グローバル度でも、英語力でも、最先端製品でも、日本あるいは日本ブランドがまるっきり顔を出さなくなる時代がもうすぐそこに来ている気がする。

大手企業の大半は、連結売り上げの半分、あるいはそれ以上を海外であげている。これから縮ゆく国内市場でどんなにブランド認知や価値が高くとも、海外市場で認知もされず、ランキングに顔を出さないようなブランドは滅びるしかない。ということは売上の半分、あるいはそれ以上が失われる可能性があるということだ。

日本本社がやることはそれこそ山のようにあるのだが...。

2010/07/20

Mobile & Facebook in Indonesia

The EconomistグループのThe Economist Intelligence Unitから、「Digital economy rankings 2010」というレポートが出ている。

2000年から世界70カ国の急増するICTの経済に対する影響を分析する「e-readiness rankings」として出されており、2010年の今年、名称を変更されたレポートだ。6つのカテゴリ、「接続性、技術インフラ」、「ビジネス環境」、「社会・文化環境」、「法的環境」、「政府ポリシー・ビジョン」、「消費者・企業の適用」をベースに各国のスコアを算出し、ランキングしている。

上位に北欧と米国が座り、6位以降に香港、シンガポール、オーストラリア、ニュージーランド、カナダ、台湾と来て、13位に韓国が入っている。日本は韓国に後れて16位だ。
Source:Economist Intelligence Unit / Digital economy ranking 2010

各国ともにICTを活用して経済を活性化させようと努力している。特にインターネット、およびコンピュータ教育には多くの予算がつぎ込まれている。

ところで、調査対象国70カ国の中で多分、もっとも英語能力が低いのは日本のはずだ。どんなにインターネットのインフラ、パソコンのスキルを向上させたところで、英語ができない限り、国内の情報・コンテンツしか入手、消費できない。最新情報を入手して、諸外国のビジネスパートナーとの新しいビジネスを始めようにも、最新トレンドに即したマーケティングを始めようにも、大きな壁にぶつかることになる。

国としてのランキングが上ったところで、ガラパゴス現象から逃れられるわけではないな、と考えていたところ、刺激的なコラム、「Social networking innovation in Jakarta」があった。要約すると、
ジャカルタに住む900万人の3分の1はBlackBerryを持っているし、他の住民も数百万のスマートフォンを所有しているので10人に9人はモバイルユーザだ。ジャカルタの人間は携帯からのテキストメッセージとモバイルFacebook利用において世界最先端の都市住民となっている。

世界200カ国にキャンペーンを展開しているシンガポールベースのモバイルマーケティング会社(BuzzCity)によると、2010年Q1だけでインドネシアは28億impression(広告)を消費している。これは二番目の市場、インドの約3倍にあたり、全世界シェアの35%を占めている。
そうだ。

そこでBuzzCityのデータを見ると、Q2までにインドネシアは約44億impressionを配信されて、前年比52%増のようだ。その伸びを凌ぐのがインドで約22億impの98%増となっている。ベトナムに至っては273%増の2.7億impだ。BuzzCityの場合、Q2までの総配信数は128億impとなっている。
Source:BuzzCity / 2010Q2

AdMobのデータを見ると、インドネシアは3位で5.3%、約11億広告impressionが配信されている。AdMobの場合、5月の総配信数は206億impとなっている。
Source:AdMob / May 2010 - Worldwide and Country data

そして、CheckFacebookによれば、インドネシアのFacebookユーザ数は約2,590万人。英国の2,650万人にあと60万人の差でしかない。今年中には英国を抜き、世界で2番目のFacebook大国になりそうだ。
Source:CheckFacebook.com

今、モバイル、Facebookで括れそうな状況がインドネシアにある。

東南アジアを管轄するシンガポールに拠点をおく日本企業の支社が、モバイルやFacebookを活用してマーケティングを実施するのだろうか?

そうなった場合、XXX(企業名)シンガポール、あるいはXXX(企業名)インドネシアといったFacebookページであったとしても、世界中のFacebookユーザがアクセスすることになる。世界中のユーザが、インドネシアというローカルなブランドの情報・コンテンツを共有することになる。

Facebookのようなソーシャルサイトにおいて、テリトリベース、ローカルなブランドコントロールは機能しない。そこで機能するのはグローバルなブランドコントロールだけだ。

2010/07/16

Attracting Website Visitors

MarketingProfsからE-commerce Factbookのサンプルが出ている。

中に、「企業・ブランドの(小売)Webサイトへアクセスした際、もっとも影響を受けたものは何か?」と聞いている。
トップグループに来るのは、「ブランド:サイト、企業、ブランドに対する親近感」で32%だ。二番目は「Email:企業からのプロモーションemail」で13%。3番目は「広告:インターネット」で12%。

次のグループには、4番目以降の「広告:既存レガシーメディア」が9%、「検索結果」が9%、「(対面)WOM」が8%となっている。

最後のグループには、「その他」が4%、「(オンライン)WOM」が3%、「その他(ギフト)」が2%、「比較サイトからのリンク」が2%、「(レビューサイト)WOM」が2%、「広告(SNS)」が1%、「(Blog/forum)WOM」が1%、そして「その他(モバイル)」が0.3%だ。

Source:MarketingProfs / E-commerce Factbook

この調査は、23,000人のオンラインショッパーに対して「小売Webサイトへアクセスした理由」を聞いたものだ。

こういったオンラインショッパーをターゲットとするビジネスを展開する企業が最もよく使っているのはDMなどのダイレクトマーケティング、および検索広告ではないだろうか?

しかし、アクセス理由のトップに来る「ブランド:サイト、企業、ブランドに対する親近感」は、既存顧客のブランド体験、各種広告、検索、各種WOM、イベント、割引クーポン、DM・emailプロモーション、ソーシャルメディアマーケティングなどの複合要素が組み合わさった結果だ。すなわち、オフライン+オンラインIMCの結果だと言えるから、これがトップに来るのは当然だ。

ところがDM系のEmailプローモーションが二番目に来るのは良しとしても、検索結果(広告)がオンライン広告の後、レガシーマスメディア広告と同じ%しか獲得できていない。クリック詐欺は止まず、キーワード単価は上昇し、ROIが低下する検索広告は、この結果を説明できない。

もうひとつ言えるのは、このアクセス理由トップこそ、ブランディングだということだ。何もセレブをフィーチャーし、「XXXを検索」とTVCFを打つことがブランディングではない。ソーシャルメディアスペースに参加するブランドと会話したいと希望する多くのユーザがいる今こそ、ブランド体験やWOMの共有や拡散から親近感、信頼を勝ち取るブランディングが求められている。

折角、顧客・ユーザ・消費者が手を差し伸べてくれている時、わざわざ、面と向かってメガフォン越しに話をする企業・ブランドはいない。メガフォンに隠されていた「顔」を出し、手を伸ばして握るだけだ。「初めまして」と。

2010/07/15

Domestic Market Shrinking

DisplaySearchのニュースリリースによれば、2012年に中国におけるFPD TVの販売台数は5,000万台を超えるそうだ。
そして、中国では1990年代中ごろにカラーTVの出荷が急増した。8~10年というTV寿命からすると4.5億台のCRT TVが、これからの5~10年の間にFPD TVに切り替えられると予想している。その結果、世界市場で見ると、2011年には米国市場を抜くと予想されている。
Source:DisplaySearch / China FPD TV Market on Track to Surpass 50M by 2012

中国が世界の工場から、世界一の市場へ成長してゆくのをこれから見てゆくことになる。そして、2010年にあった日本市場の世界シェアが2014年には半分以下に落ち込むのを見ることにもなる。それは、世界の市場規模が拡大するにつれて当然のシェアダウンではあるが、販売台数的にも、金額的にもダウンすることになるはずだ。

ということは、伸びの見込めない国内よりも、中国や欧米、東南アジアなどでの販売に注力することになる。その際、国内広告・マーケティング予算がそのままだろうか?

税法上、海外子会社への利益供与と判断される海外子会社の広告・マーケティング予算の一部負担を直接的に国内予算から行うことはないとしても、少なくなる販売額にも関らず、前年同額の広告予算が支出されるのだろうか?同じ人員規模の広報・広告部が活動するのだろうか?

縮小するばかりで底の見えない国内市場に今と同じ人員、予算をはりつける過ちを犯すのか、それとも、先進国+新興国市場に対するグローバルなマーケティングを本社が行うために新しい組織、人員、予算を既存組織からシフトさせるのだろうか?

2014年にはおそらくソーシャルメディアスペースで世界中のデジタルネイティブ達が英語でコミュニケーション、エンゲージメントを毎日、様々な形で行っている。そのスペースに参加もせず、モニタリングもせず、エンゲージもできない企業・ブランドが淘汰される実例がひとつや二つはでてきていそうだ。

それを考えれば、今こそ、組織改革の時だと思うが、いかがでしょうか?

2010/07/14

Blog and Vertical SNS

BabyCenterというサイトがある。「妊娠や子育て」というニッチなトピックにおける最大サイトだそうだ。
Source:BabyCenter

そこから面白いレポートが出ている。

BabyCenterのプロモーショナルレポートなのだが、中に、「他の妊婦とコネクトしたり、妊娠や子育て情報に関しての情報を入手するために最もよく利用するSNSはどこ?」というスライドがあり、
  1. 43% Facebook
  2. 17% BabyCenter
  3. 9%  MySpace
となっている。

しかし、SNSアクセス目的を詳しく見ると、「情報入手」や「製品推奨」といった面でBabyCenterがトップですよというスライドが次に来る。「おつき合い」や「エンタメ」ならFacebookやTwitterがBabyCenterを上回るが、企業・ブランドのマーケティング戦略からすると、女性・Blogネットワークや、BabyCenterといったバーティカルなSNSですよというわけだ。
それは、「妊娠や子育てに関する質問」、「子育てのコツや助言」、「同じ妊婦さんからの情報」といった点で、BabyCenterやCafeMomが、Facebookを上回っていることからも明らかだ。
Source:BabyCenter / Study April 2010 (pdf)

BabyCenterのようなニッチSNSはいくらでもある。FacebookやTwitterがソーシャルマスメディアとするなら、それはソーシャルニッチ・バーティカルメディアと言える。

今後、このソーシャルニッチ・バーティカルメディアの重要性が増してゆく。妊婦などが必要とする(製品)情報がソーシャルマスメディアにはないことを知っているからこそ、彼らはソーシャルニッチ・バーティカルメディアへアクセスしている。FacebookやTwitterが巨大化し、ソーシャルマスメディアになるにつれて、こういったニッチ・バーティカルメディアのニーズが増してゆくはずだ。

一方、ひょっとすると、FacebookやTwitterがレガシーメディア化、あるいはTV化してきているのかもしれない。結局、それを使う企業・ブランドがTVと同じように一方通行のメガフォンマーケティングチャネルとして使っているということだ。

既存マーケティングをソーシャルメディア化するグループと、ソーシャルメディアを含めたIMCを推進するグループに二極化すると考え、最終的にはIMC側が勝利すべきだと考えている。が、単純ソーシャルメディア化グループが、既存組織のまま、既存予算を振り向ける形が主導権を握っているのだろうか...?

参考:Japanese Brand Endangered (Online Ad 2010/06/21)

2010/07/13

Digital Influencer Index 2010

インターネット人口の48%を占める世界の7カ国、米、英、独、仏、加、中、日を対象として、メディアの影響力を調査した、Fleishman-Hillardの「Digital Influencer Index 2010」が出ている。

2008年に紹介したDigital Influence Index Studyの拡張版ということになる。

参考:Digital Influence Index Study (Online Ad 2008/07/02)

9個ポイントが挙げられているが、その中からいくつか紹介する。

まず、「グローバルに見てデジタルメディアの消費者への影響力が高いにも関わらず、投下されるマーケティング予算は見合っていない」という最初のポイントがある。

7カ国のメディア消費時間(週)において、中国と仏を除く5カ国でトップはTVだ。インターネット利用はわずかな差で2位につけている。しかし、emailもそこそこの時間を消費しているので、これを合計するとトップになる。しかし、マーケティング予算は...、ということになる。まったく、メディア消費時間から考えると、レガシーメディアへとんでもない予算が投下されていることになる。

そして、中国のメディア消費時間シェアはもっととんでもないことになっている。インターネットがダントツで、TVは携帯と同等の時間しか消費されていない。TVの時間枠を売るエージェンシーは、これをどうやって説明するんでしょうか?
そして、メディア消費時間に重要度を加味したメディアインデックスを見ると、もう、TVの出る幕はない。メディアインデックスで言うと、中国のTVはインターネットの四分の一、日・英を除く4カ国は二分の一、日・英は六割といったところだ。
2番目に、「中国のインターネットユーザは先進的なアーリーアダプターで、増加する余地がある」という点だ。

以下の5つの行動インデックスのトップに来るのは中国だ。上位3カ国を比べると中国が突出しているのがよくわかる。
  • 調査・検索       中国85%、日本77%、仏64%  
  • コミュニケーション   中国85%、仏51%、加・日50%  
  • Eコマース        中国51%、日本40%、独24% 
  • 発信           中国77%、日本33%、加20% 
  • モバイル         中国73%、日本49%、英25% 
ここまでインターネット化、モバイル化が進んでいる中国は、まだこれからの国だ。これからもガンガンと大幅に伸びる余地が有り余っている国だ。そんな国においてレガシーマスメディア広報、広告、マーケティングをやっているとしたら...?

3番目に「調査・検索、購買、そしてピアの影響によりデジタルメディアは決断のコアを成す」があり、7番目に「ユーザの声を聞き、リアルタイムで対応する企業をTwitterユーザは信頼する」がある。

Twitterをモニタリングしている企業・ブランドに対して、「自分が抱える問題に耳を傾け、対応してくれれば嬉しい」と考えるTwitterユーザはどこの国でも同じだ。特に中国でその比率は94%(重複回答)だ。ただし、それ以外の国では、「プライバシーがらみで心配」、あるいは「見せかけだけ」だという比率が高くなる。
そして、Twitterをやっている企業・ブランドを信頼するかどうかと聞かれた場合も、中国がダントツで信頼している。日本も中国に続いているが、他5カ国とは色合いが大きく違う。欧米各国では「企業・ブランドを信頼するかどうかには関係ない」と回答するケースが多い。それはそうだろう。アカウントを開設しただけで信頼が勝ち取れるわけではない。Twitterするコンテンツ、コンテキストが問題になるのは当たり前だ。が、中国や日本ではすこし違うようだ。
Source:Fleishman-Hillard / Digital Influencer Index 2010 (pdf)

Twitterアカウントを持っているだけでは意味がなく、きちんと企業・ブランドに関連するバズをモニタリングし、リアルタイムに対応してくれることが必要だろう。そして、Twitterでつぶやく内容が問題だ。ポリシーやガイドラインを決める前に、何をつぶやくかを決める必要がある。

そんなことは決まっている。各種プレスリリースのタイトルや、新しくYouTubeにアップしたビデオ、開催イベントやプレスリリースまでに行かない速報をつぶやけば良いと考えているとすれば、信頼を勝ち取ることも、Twitterというデジタルメディアを活用することにもならない。ユーザにとって意味のない、泡を吐き出しているだけだ。フォロワー数やRT数が増えたところで全く意味のない数字を額装することになる。

そして、Samsungのように日本語を英語に訳してまでモニタリングしている企業からすれば当然だろうが、モニタリングの「モ」も検討していないとするとTwitterアカウント開設の価値は半減以下に落ちることになる。

参考:Samsung's monitoring deeper (Online Ad 2010/07/05)

2010/07/12

Moible Access 2010

PEWから「Mobile Access 2010」というレポートが出ている。

米国のモバイル(PC、セル)デバイスによるインターネットアクセスはアーリーマジョリティを越えたところだろうか。モバイルPCによるインターネットアクセスは47%、セルは40%、合計すると59%にも達している。

残りの41%のうち、19%はインターネットを使っていないユーザで、22%はモバイルアクセスをしていないということだ。ということは実質、レイトマジョリティに達しているようだ。
今のところ、PCとセルの両方を使ったアクセスが半数近い。セルだけのアクセスはまだ20%でしかないが、18-29歳の19%はセルワイヤレスのみだ。30-49歳が13%、50-64歳以上が9%なので突出してい る。やはり、デジタルネイティブはインターネットにも、ソーシャルメディアにも、そして、モバイルにも強いのだ。
次に合計55%が、日に一度以上はインターネットへアクセスしているというデータがある。
Source:PEW / Mobile Access 2010

デジタルネイティブが数を増し、人口比率を上げてくるにつれてモバイルによるインターネットアクセスが増えてきている。そして、その中心はPCからセルに移行しているようだ。

それは、セルを使ってユーザがやっていることを見ても分かる。下に加えて、
  • 53% 写真・ビデオを友人などへ送信
  • 23% SNSへアクセス
  • 20% ビデオを視聴
  • 15% 写真・ビデオをアップロード
  • 11% 物品を購買
  • 10% ステータスアップデート(Twitter)を実行
をやっている。これだけのことができるデバイスは他にない。
モバイル、セルといったキーワードをつなげればやるべきことは見えてくる。ここにも国境はないのだから。

2010/07/09

Hyundai Boosting Sales in China

韓国のエレクトロニクス企業、SamsungやLGEについて書いたことはあるが、韓国の自動車メーカーについては全く書いてこなかった。たまには車に関して書こうかと思っていたところ、面白い記事があったので紹介する。

昨年、中国が米国にとって代わって世界最大の自動車市場になったわけだが、今年、韓国の現代自動車にとって中国が韓国の国内市場を抜いて最大の市場になるとJoongAngDailyが伝えている。

下図のように3月、4月と韓国内での販売台数を中国での販売が上回っている。2月は韓国での販売台数が上回っているが、これは中国工場の設備更新が原因しており、それがなければ1月から4カ月連続で中国での販売が上回っていたことになる。

そして、下のYuedongは4月、中国市場におけるコンパクトカー部門で中国BYDのF3を初めて抜き、販売台数トップの座に躍り出ている。
Hyundai Yuedong
Hyundaiは今年、中国で67万台の販売を目指しているそうだ。

Source:AutoGuide / Hyundai's Biggest Market Is China, Not Korea
Source:JoongAndDaily / China now Hyundai's No.1 market

Hyundaiは昨年、310万台を生産し、そのうち149万台は海外生産分だそうだ。当然、売上の半分は海外、ことによると利益の半分以上は海外という状況なのかもしれない。

こんな時、本社は海外販売拠点に販売すべてを任せているのだろうが、国境のないインターネット時代、ソーシャルメディア時代の先頭を行くデジタルネイティブに対して、Hyundai本社がどのようなブランドマーケティング戦略を企画しているのかに非常に興味をそそられる。

ソーシャルメディアやデジタルネイティブに対して語る言葉、語るスペースを持たず、VWが開始した2011年モデルのGTIキャンペーンに対しても学習する点がないのだろうか?それとも...?

参考:Japanese Brand Endangered (Online Ad 2010/06/21)

2010/07/08

Twitter Buzz Marketing

Virgin Americaが、SFOあるいはLAXからトロントへの直行便を就航するにあたって採用したのはTwitterによるバズマーケティングだった。

その際、Virginは、Twitterユーザのインフルエンス度を分析、情報を提供しているKloutと連携している。Kloutは何をやっているかというと、たとえば元Forrester、現AltimeterのCharline LiのTweetを分析し、メッセージリーチ、総RT数、ユニークRT数、ユニークメンションなどから、Kloutスコア40とし、彼女を「Thought Leader(実践的先駆者)」だとしている。
Source:Klout / charleneli

そのKloutを使い、Virgin Americaブランドや直行便就航に関するバズ生成を仕掛けたわけだ。

Kloutがインフルエンサーとして抽出したユーザにemailが送られて、下のページに誘引されたそうだ。
Source:Klout / Virgin

誘引され、Virgin Americaのキャンペーンに参加したユーザは、SFOあるいはLAXからトロントまでの無料往復航空券(Wifi込)がもらえ、トロントで予定されている就航記念イベントへ招待されることになる。

このキャンペーンは、Kloutだけではなく、Mashable、LA Times、BNETなど各種メディアが報じ、期待通りのバズが発生したそうだ。

Source:The Big Money / Virgin America Sucks Up to Canadian Tweeters

このキャンペーンで最も注目すべきは、Influencer Code of Ethicsにある下の文だ。
If you accept the offer you are not required to do anything. We do not want to "buy" your tweets. You are receiving the product because you are influential and have authority on topics related to the product. This is a more targeted form of receiving a sample while shopping at the grocery store. You are welcome to tell the world you love the product, you hate the product or say nothing at all.

If you decide to talk about the product we will ask you to disclose that you received a sample (http://www.cmp.ly/2/va). We will send you more information about this when we ship the product.
「キャンペーンに参加しても何もしなくてもいい。良く言っても、悪く言っても、あるいは何も言わなくてもいい」が、「キャンペーンについて何かを発信する際は、臨時収入を得ることを明記するよう要請する」というのは、FTCが要求する開示条件を満たしながら、「ユーザ評価、意見、苦情などをブランドがコントロールしない、できない」と明示していることだ。

BloggerやTwitterを金で買い、企業・ブランドに都合のよいことを並べ立てさせるネガティブをようやく理解してきたケースが出てきたということだ。皆、同じコンテンツをコピペし、似たり寄ったりのBlogやTweetに金を払う、スペースや時間枠を買うという、レガシー広告・広報・マーケティング手法をベースとしたやり方では、何も共有してくれないし、何も拡散してくれないことを学習してきたわけだ。

もう、そんな時代ではなく、企業・ブランドがコントロールできないスペースで会話やエンゲージメントが成され、情報やコンテンツが共有されていることを1社が学習し、実践した。しかし、この1社でことは済むだろうか?

この1社の実践例は、他の多くの企業に共有され、学習されてゆく。そんな時に、あくまでもPPP(Pay per post)を押しとおしたとしても、ネガティブ臭がプンプンの記事になびく、踊らされるユーザ数は少なくなるばかりだ。いつまでもBloggerを束ねたマーケティングを企画しても効果は薄い。

2010/07/07

Online TV Revenue

EIAAが6月10日にロンドンで、「Online Video Advertising Forum」を開催していた。いくつかプレゼン資料がアップされている中から、衛星・地上波TV局がこぞってオンライン化を促進し、積極的にマネタイズしようとしている現状と今後の売上予想をしているScreen Digestの「Emerging trends in Online video」を紹介する。

2009年、欧州におけるオンラインTV(番組)売上は前年比倍増している。中でもプリロールなどの広告付き番組ビデオが売上の大半を占めている。と言っても、最大の英国で1億ユーロを越えたばかりだ。スペインはまだ始まったばかりと言った状況だ。
そして、これからも行け行けどんどんかというとそうでもない。英国の視聴時間予想を見ると、2014年でも2010年の倍までは伸びそうにない。UGCビデオの伸びに頭を押さえつけられているかのようだ。と言っても、年間視聴時間が30億時間を越えるとUGCビデオも伸びは縮まってくる。そして、1時間番組当たりのスポット数を見ると大きくばらついている。米国のABCやCBSの倍近いスポットを入れているITV、Prosieben、Mediasetもあれば、TF1のように1本というところもある。これはスポット数を増やすと視聴者が減るのではないかと言う心配が頭をもたげてくるからだ。特にオンラインでは別タブ・ウィンドウへ移ることが簡単だし、第一、最初からマルチタブ・ウィンドウで視聴しているユーザもいるからだ。
最後に2014年での予想を立てている。欧米6カ国のいずれでもオンラインTV(番組)売上は3%以下とされている。通常TVスポット売上がどの国でもシェアが落ち、Pay TV Subscriptionがシェアを伸ばすと予想されている。
Source:EIAA / Online Video Advertising Forum - Screen Digest (pdf)

どうやらTV局にとってオンラインTV売上が救世主になるとも言えないようだ。

人口6,100万人の英国には4,700万人程度のインターネットユーザがいる。現行76%程度の普及率は2014年までに伸びたとしても80%程度までだろう。4,800万人強のユーザが32億時間オンラインTV(番組)を見ると、1日当たり約11分となる。それで3%以下の売上だとすると高が知れている。

これが1日当たり1時間になり、15%強の売上になったとしても、通常TVスポットが喰われるだけだろう。同じパイの喰い合いになるだけだ。UGCビデオをなんとか取り込むことでしかパイを大きくすることはできそうにない。

日本ではNHKなどもこぞってオンデマンド番組供給に舵を切っているが、将来予想はどこまで、どのようにしているのだろう?ま、NHKはよしとしても民放各局はちょっと心配。

2010/07/06

Online Newsroom

iPressroomからとてもコンパクト、的を得たオンラインニュースルーム構築のガイドが出ている。
オンラインニュースルームは企業・ブランドの顔であり、現在、必要とされるコミュニケーション、エンゲージメントを構築するための最前線基地だ。ユーザがコンテンツを見聞きし、最新コンテンツを求めて何度も足を運ぶ場所にすべきだ。
ということで、オンラインニュースルームの基本10カ条をあげている。

それを筆者流に意訳させていただくと;
  1. 頻繁に、価値が高く、関連性があり、エンゲージし易いコンテンツを発信し、共有・拡散しているオンラインニュースルームですか?

    それとも苔むしたプレスリリースを既存レガシーメディアに配信するだけですか?

  2. 記者、消費者、投資家、ステークホルダーなど多様なオーディエンスを考慮したオンラインニュースルームですか?

    それとも苔むした既存レガシーメディアだけを対象としていますか?

  3. 今、もっともユーザが求めている多様なフォーム(テキスト、画像、ビデオ、オーディオ、pdf、Blog、Podcasts、RSSフィード、他)を提供するオンラインニュースルームですか?

    それともテキストだけですか?

  4. アクセスユーザが友人・知人・家族・同僚たちとコンテンツを共有し、議論し、コンテンツを活用して発信できるようなオンラインニュースルームですか?

    それともコンテンツを単に印刷できるだけですか?

  5. 検索エンジンが定期的にクロールした結果が効果的に検索ユーザに伝わるようなオンラインニュースルームですか?

    それとも検索結果の下位にしか顔を出していませんか?

  6. 最新のWebデザインや他社事例を参考にして、簡単なナビゲートや検索を提供しているオンラインニュースルームですか?

    それともテキストベースのプレスリリースしかなく、それも見つけにくいものですか?

  7. アクセスユーザがサイト、コンテンツ、データフォーム、配信チャネルなどに対する評価、意見を書き込んだり、担当者にコンタクトできるようなオンラインニュースルームですか?

    それとも担当者名も、写真も、コンタクト先もありませんか?

  8. Spam Botsなどからコンタクト情報などを保護する作りになっていますか?

    それともコンタクトemailはSpamメールに血祭りにあげられていますか?

  9. 検索エンジン、Email、Facebook、Twitter、Blog、YouTube、Flickr、SlideShare/Scribdなどオーディエンスがいつも活用しているコミュニケーションチャネルにコンテンツを配信する仕組みを装備したオンラインニュースルームですか?

    それともこれら仕組みを追加、編集するにはすべてIT、情シス部門、あるいはWebマスターにお伺いを立てなければなりませんか?

  10. ユーザがWebサイトのどこへアクセスし、どんなコンテンツを消費、共有、コメントし、Email・RSSフィードに登録したのかトラッキングしているオンラインニュースルームですか?

    それともIT、情シス部門、あるいはWebマスターに聞いたところで、答えが返ってきませんか?
ということになる。

Source:iPressroom / Ten Actions that Leads to a Better Online Newsroom

マーケティング側から考えれば、至極当然、やっていなければ大ブーイングを浴びて、最悪の場合は「君はもういらないよ」と最終宣告されそうな基本中の基本だ。

この10カ条に付け加えることはまだまだあるが、その前に確認すべきことがある。それは、広報部門およびPRエージェンシーの現状把握と、PRエージェンシーの企画・提案力だ。

日本が誇る世界的な自動車メーカーのニュースレターがテキストベースなのを知ってますか?昨年1月に登録してからもう1年半が過ぎたが、時々に来るニュー スレターがテキストベースのまま変わっていない。また、やれ販売台数が過去最高を記録したとか、どこそこに工場を建設したとか、コンテンツは旧態依然、言 いたいことを書き連ねるだけで、会話を始めようとか、ユーザとエンゲージしようともしておらず、コンテンツを拡散してもらうためのツールも装備していないWebページに飛ばされるだけだ。これがすべての日本企業・ブランドに当てはまりそうな気がする。

そして、企業・ブランドにお聞きしたい。PRエージェンシーから上の10カ条と類似した提案をされていますか?その上で、追加、補強施策を提案されたことがありますか?それとも、プレスリリースをオンライン化することだけしか提案されていませんか?今のテキストベースのオンラインニュースに関して何も改善提案をされたことがありませんか?競合他社のオンラインニュースルームの分析を提示されたことはありますか?と。

こんな状況で日本のブランドはどうしたら良いんでしょうね?

2010/07/05

Samsung's monitoring deeper

6月18日に、「Learning from Customers」を書いた。SamsungTweetsが、「(SamsungTweetsというTwitterアカウントを)どう思ってますか?良い仕事をしてると思いますか?」と、ユーザの評価、声を聞こうとしたTweetを取上げて、
パラダイムシフトを理解し、ユーザから学ぼうと言う姿勢があり、その企業・ブランドにエンゲージするユーザがいる。そして、そのエンゲージメントが世界中 のユーザに露出している。
と書いた。

参考:Learning from Customers (Online Ad 2010/06/18)

この書込みに対して、19日の未明、Samsung Electronics Americaからアクセスがあった。流石にSamsungはバズモニタリングをちゃんとやっているなと納得したが、気になることがある。
それは、Twitterをリフェラルとして、直接「Learning from Customers」のURLへアクセスしていることだ。

筆者はBlogをアップした際、TweetDeckからTwitterとFacebookにも更新しているが、Twitterの「Learning from Customers http://bit.ly/cyLyE6」というTweetでSamsungの注意を引くとも思えない。

そこで、Twitterで、「SamsungTweets」を検索した処、「nori76」という日本ユーザの方が、SamsungTweetsのTweetと「Learning from Customers」への短縮URLをTweetされていた。この短縮URLから流入してきたようだった。
それにしても、毎日、SamsungTweetsを含んだ数百、あるいはそれ以上のTweetをひとつひとつを確認しているのかとちょっと驚いた。しかし、驚きはそれだけではなかった。

その後、「Online Ad」のログをSitemeterで見たところ、19日未明、12:57:04から2:34:01までの間に「204.181.196.185」というア ドレスから6回もアクセスがあった。合計で26ページにアクセスしている。
そこで、2回目のアクセス時を詳しく見てみた。

以下のログを見ると、「Learning from Customers」から、ホームページへ行き、その時点でトップページになっていた「Learning from Customers」を日本語から英語へ翻訳している。それも「Learning from Customers」が参考としてあげていた「Samsung Twitter Press Conference」も翻訳して内容を確認している。
参考:Samsung Twitter Press Conference (Online Ad 2010/01/08)

また、6回のアクセスを詳細に見ると、ブラウザ(バージョン)とPC解像度から最低4人がアクセスしていたことが分かった。この最低4人が「Learning from Customers」と「Samsung Twitter Press Conference」へアクセスし、翻訳してまで内容を確認していたことになる。
まとめると、
  1. Samsungは、SamsungTweets、SamsungImaging、Samsungなど複数のTwitterアカウントを持っている
  2. それぞれのTwitterアカウント名で検索し、毎日モニタリングしている
  3. そのモニタリング要員は最低4人いる
  4. 検索による数的なモニタリングだけではなく、内容確認までしている
  5. 必要とあれば翻訳した上で内容確認している

    ここから先はログなどで検証できないため、推測だが、

  6. 検索結果に上がってきたBlog、Twitter、Facebookなどソーシャルメディアスペースでのバズソースの影響度(Blog読者数、Twitterフォロワー数、Facebook友人数、リンク数、引用数、トラフィック、SlideShareなどに上げているファイルの閲覧・ダウンロード数など)も確認している

    そして、Samsungがモニタリングしているバズ数が10件や100件なら上のように、丁寧に、詳細に、モニタリングすることも可能だ ろう。しかし、4人がかりで33分以上も「Online Ad」のエントリ内容を翻訳してまで確認するとなると、こんな深堀をすべてのバズに対してたった4人でできるわけがない。

    とすると、

  7. Samsungは社内リソースを使ったモニタリングのほかに、社外リソースを使ったモニタリングをしている。(社内リソースはTwitterなど自社アカウントやFacebook/YouTubeなどのページまわり、社外リソースはそれ以外のソーシャルメディアスペースでのバズモニタリング)
ということになる。

Samsungに関するバズは毎日、最低でも一万件発生している。このバズを社内の4人でモニターすることは全く不可能だ。企業・ブランドがユーザの声や意見、苦情を聞こうという姿勢を持ったとしても、社内リソースを120%活用した処でできることと、できないことがある。しかし、ユーザの声、バズを拾わなければという命題を少しでも満足させるためには社外リソースを活用するしかないということだ。

それにしたところで、24/365体制を組んだところで、巨額なモニタリング予算を組んだところで、100%バズモニタリングを行うことは困難だ。ただし、モニタリングを検討さえしていないどこかの企業・ブランドと比べれば段違いにソーシャルメディアスペースの理解が進んでいるし、ユーザの知見を活かそうとする姿勢が見える。

別に、Samsungは大向こう受けを狙った3DTVプロモーションだけをしているのではなく、今、ユーザがどこに集い、何を聞き、話し、書いているのかを学習している。今、ユーザの声を真摯に聞かなければ、3年後、5年後にSamsungのコミュニケーションメッセージを聞いてくれるターゲットオーディエンスがいなくなることを理解している。

参考:Samsung 3D TV Promotion (Online Ad 2010/06/03)

なお、今回のSamsungが行った深堀モニタリングをまとめたレポートをBox.netにアップしてあるので、興味のある方はどうぞ。

参考レポート:SamsungMonitoringDeeper

2010/07/02

Reputation Management

PEWから、「Reputation Management and Social Media」というレポートが出ている。

まず、自分自身に関して、名前やどんな情報がインターネットに上がっているかを検索する率は2001年の22%から、2009年には57%にまで上昇している。

いろんなSNSに登録していたり、BlogやTwitterから発信していたり、Flickr、YouTubeなどにスペースを確保していたり、email登録、コンファレンス参加、ECサイトでのオンラインショッピング、そしてチャットやSNSなどでの会話、ブランドとのエンゲージメントまで、広い分野に参加し、個人情報を記入、登録してきたユーザは、インターネットに自分がどのように露出しているのか、そして、自分に対する人の声や評価を聞きたくなる。だから全体平均もそうだし、各年代別の検索率も上がってきている。
もはや、検索と日常生活は切り離せないパッケージになってきた。また、独り歩きしがちなオンラインの情報、評価がオフラインのそれを上回り、一般個人ユーザの懸念事項ともなっていることをうかがわせている。

そして、昔の知り合い、専門家、友人、家族に加えて、「同僚や競合」を検索する比率が2006年の19%から26%へと上昇している
また、他人を検索するものとして、一番伸びたのは33%から48%へ上昇した「ソーシャルメディアスペース、あるいは専門家ネットワーク(LinkedIn)」だ。
Source:PEW / Reputation Management and Social Media

ということで、PEWは、
  1. 個人が自身のレピュテーションマネージメントを行ってきている
  2. 個人の情報管理をしっかりしてきている
  3. 検索とソーシャルメディアスペースがオンラインレピュテーションを確立するスペース
  4. 関ってくる人たちのデジタルフットプリントをモニタリングしている
と言っている。

ここにあるのは、モニタリングとレピュテーションマネージメントだ。

個人がインターネット、検索、ソーシャルメディアを活用するにつれて、自分自身の価値、評価、つながっているネットワークを保護し、自分に関ってくる他人の評価を調査している。

このようにインターネット、ソーシャルメディアのパワー、影響力、訴求力を自覚するユーザは自分自身を守るために、そして、関ってくる他人をモニタリング、評価している。これこそ、今の時代の企業・ブランドが行うべきことだと考える。

昔通りに、一方通行のメガフォンマーケティングをソーシャルメディアスペースでやっている限り、レガシーマスメディアはコントロールできたとしてもソーシャルメディアの情報・コンテンツ・バズはコントロールできない。モニタリングとレピュテーションマネージメントはパラダイムシフトの第一ステップだと思うが、いかがだろうか?

2010/07/01

Social Media Markeitng Spending Forecast

Borrell Associatesから、「Social Networking Explosion: Ad Revenue Outlook (Executive Summary)」というレポートが出ている。

サマリなので、9月に予定されているコンファレンスなどあまり中身がないのだが、唯一、ソーシャルメディアマーケティング予算の予想グラフがあった。

それによると、2009年にソーシャルメディアマーケティング予算は40億㌦以上で、その半分はNational Advertiserだった。2010年の予想では前年比68%増の75億㌦前後となる。とすると、オンライン予算の11%がソーシャルメディアマーケティングになるそうだ。
そして、5年後には380億㌦、オンライン予算の三分の一がソーシャルメディアマーケティングになるという。

Source:Borrell Associates / The Social Networking Explosion: Ad Revenue Outlook

よく見てほしいのは2012年に、ソーシャルメディア向けオンライン広告と、プロモーション予算が交わり、2013年以降、オンライン広告の伸びをプロモーション予算が上回ってゆくことだ。

広告費と切り離されていることから、このプロモーション予算にはソーシャルメディアスペース構築関連、モニタリングなどが含まれ、ソーシャルメディアスペースに参加し、コミュニケーションを広げ、エンゲージメントを拡大してゆくということは組織、人員、予算が要ることから、それらも含まれているのだろう。

そして、そのコミュニケーションやエンゲージメントが広がれば広がるほど、それを会話の参加者、コメント者、傍観者が自分のネットワークに広げてくれるようになる。それまでは、オンラインのソーシャル広告で会話の存在、スペースに参加している企業・ブランドのプレゼンスを露出、告知、認知してもらう必要がある。しかし、コミュニケーションやエンゲージメントが分岐点を越えた時、オンライン広告は役目を終えることになる。あるいは、新しい会話の露出、告知にその役目が限られてくるようになる。

それをものの見事に示しているグラフだ。

以前、紹介したIBMの「Beyond Advertising」というレポートによれば、2012年に既存レガシー広告予算は2002年の47%から32%へ激減すると予想されている。そして、オンライン広告を含むインタラクティブ予算が7%から27%へ急増すると予想していた。
参考:Beyond Advertising (Online Ad 2009/04/30)

これら数字は2008年に予想されたものなので、大幅な改訂が必要だろう。すなわち、2012年にレガシー広告費は20%台後半へと落ち込み、インタラクティブチャネル予算を30%台半ばとし、その中でもオンライン広告を含まないソーシャルメディアマーケティング予算がひょっとすると10%といった数字になるのでは...。

いや、Borrellの予想が正しければ、インタラクティブチャネル予算の半分、15%が相応しいところだろうか。