2010/05/26

BP Reputation Management Challenged

4月20日に爆発、その後沈没したBPの石油掘削プラットフォームのおかげでメキシコ湾での原油流出は今も続いている。いつ流出が止まるか分からない現状からすると、環境被害、漁業被害は天文学的な数字になるかもしれない(?)。

その当事者、BPのグローバルサイトは事故の最新情報、追加コンテンツ、ビデオアップデート、ダウンロードファイル、ツール、コンタクト先、プレスリリースなど、これでもかといった具合にコンテンツを供給している。
Source:BP.com

そして、Twitterはどうなっているかというと、BPで検索するとBPGlobalPRというアカウントがトップにきている。しかし、このアカウントはとても世界に冠たるBPとは思えないTweetを重ねている。

例えば、
  • I'm sorry, are people mad at us for drilling in the ocean?!? Maybe God shouldn't have put oil there in the first place. DUH. #bpcares
  • Please do NOT take or clean any oil you find on the beach. That is the property of British Petroleum and we WILL sue you.
といった具合だ。

「BPは事故を起こし、メキシコ湾全体にとてつもない影響、被害を及ぼしているのに、何だこのTweetは、とんでもない企業だ」と思うユーザがいるかもしれない。
しかし、BP_Americaという別なアカウントもある。こちらはまともなTweetだし、ちゃんとグローバルWebサイトへのリンクもある。
Source:Twitter / BPGlobalPR
Source:Twitter / BP_America

BPGlobalPRというアカウント名からして、BP_Americaといった現地子会社ではなく、BP本社の広報が運営しているアカウントのように見られなくもない。しかし、このBPGlobalPRというアカウントは、「bp cares」というロゴのインクがにじんで汚いTシャツも売ろうとしているStreetGigant.comというサイトがBPの揚げ足を取り、おふざけ的に、あるいは実利を兼ねてやっているようだ。

こんなアカウントがとんでもないTweetを重ねている。そしてBPGlobalPRのフォロワー数は25日時点で約18,000、約4,600のBP_Americaより4倍近くも多い。今朝は28,000以上となっている。一日で1万人以上のフォロワーが増えている。また、BPGlobalPRのTweetはいずれも100回以上RTされている。これがどんなことかわかるだろうか?

おふざけ的に受けてくれるだけならいいが、そうも行かないかもしれない。真に受けたユーザが憤慨してTweetやRTしたり、別ユーザが輪をかけた悪さをTweetすることでネガティブセンチメントが累積してゆく。そして、どうやら@Wiredが@BPGlobalPRの誘いに乗ってしまったようなので、マスメディア系への露出もこれから急増してゆくだろう。にもかかわらず、BP側からの対処はないようでBPGlobalPRのアカウントはまだ生きている。モニタリングをしていない企業・ブランド側が風評被害を見過ごし、レピュテーションマネージメントが危機に瀕している。

そして、そんな状況に輪をかけるのが、BPのグローバルサイトだ。前述のように一見すると、最善、最適、最新のニュース・情報・コンテンツを供給しているようだが、ソーシャルメディアスペースにおける共有機能は皆無だ。

辛うじてRSSフィードだけはあるが、Share This、Add Thisはもちろん、ユーザのFacebook、Twitter、YouTubeアカウントを利用してコンテンツを共有する機能、また、Email転送などの機能はWebサイトに装備されていない。

これでは、ソーシャルメディアスペースに参加するのではなく、我々のコンテンツを見たいのなら、Webサイトへアクセスしろと言っているということになる。あるいは、Webサイトに全ての情報・コンテンツを供給しているから、これで我々の責任と義務は十二分に履行されていると胸を張っているということになる。また、情報・コンテンツを制作・発信するパワーがユーザにシフトしたにも関らず、ソーシャルメディア時代以前に企業・ブランドが持っていた一方通行コミュニケーションを踏襲しているだけだということにもなる。

Nestleの株主総会を揺るがした原因はGreenpeaceかもしれないが、Nestleに抗議のEmailを送ったり、Facebookを乗っ取ったのはGreenpeaceの賛同者だけではない。ソーシャルメディアスペースで情報・コンテンツを消費、共有したその他大勢のユーザが参加したからこそ、NestleのCEOは対策を発表しなければならなかったわけだ。旧態依然の対処ではもう立ち行かない時代なのだが...?

参考:Greenpeace Campaign Against Nestle (Online Ad 2010/04/19)

なお、ToyotaやNestle、BPとは違い、わが社は人身事故の危険もなく、熱帯雨林の違法伐採を行うサプライヤーと取引もなく、一旦大規模事故が起これば未曾有の被害をもたらすような事業はやっていないと他人事を決め込んでいる企業・ブランドはいるだろう。

しかし、こんなブランドレピュテーションの危機を迎えることは絶対ないと断言できる企業・ブランドは存在し得ない。自社の故意、過失の別なく事件、事故は起こるし、BPGlobalPRのように火事場泥棒を決め込む輩はどこにでもいるのだから。彼らにとって、企業・ブランドに責任のない事件、事故であったとしても、それを利用、悪用することさえできればいいわけだ。そして、そんな輩は世界中に掃いて捨てるほどいる。今も、彼らはBPとBPGlobalPRのケースからせっせと学んでいる。一方、企業・ブランドはただBPから学ぶこともなく...。

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