2008/12/01

HP - Social Media Marketing

HPの「Dragon」というニックネームが付いているHDXというPCをご存知だろうか?

2007年半ばに発売されたNotePCだ。20.1インチの広角ディスプレイ、HDTVチューナー、サブウーファ、4個のAltec Lansingスピーカー、Webカメラ、ATI HD26000 TXグラフィックカード、指紋認証システムを装備したモンスターマシーンだ。(下をクリックでサイトへ)
このモンスターハイスペックにふさわしく、価格は3,000㌦からだ。ターゲットも25-34歳で可処分所得に余裕のあるニッチ層をターゲットにした製品だ。

当然、ハイテクコミュニティでは発売当初から高い評価を受けていたが、価格の高さが障害となってなかなか期待するほどの売上はあがっていなかった。

そこでHPパーソナルシステムグループのVP兼GM、Scott Ballantyneが執った戦略とは?

Source:HP / HDX Premium Notebook PC

TVCFや業界誌広告でも、オンライン広告でもなかった。彼がやったのはニッチターゲットに影響力のあるBlogger31人を選抜し、31人それぞれが独自にコンテスト・キャンペーンの企画から実施、優勝者の選考を行い、31人の優勝者にHPのHDX(ソフトなど込みで5,000㌦相当)を優勝賞品として渡す「31 Days of the Dragon」というプロモーションを実施することだった。

HPはこのコンテスト・キャンペーンを支援する広告、マーケティングは一切行わず、企画・実施・選考などはすべて31人のBlogger達が全責任を負っていた。Blogger達は自身の読者コミュニティに対して様々な企画を立てて、コンテスト・キャンペーンを行った。

今年5月から6月にかけて行われたコンテスト・キャンペーンの結果は;
  • HDX Dragonの販売は84%増加
  • HPのPC販売全体も10%増加
  • HP.comへのトラフィックは10%増加
  • 「31 Days of the Dragon」に参加したBlogサイトの合計トラフィックは5,000万以上
  • 全世界40以上の言語、123カ国からアクセス
  • 1万本以上の関連する自作ビデオが共有サイトなどにアップされ
  • コンテスト参加者自身のWeb/Blogへのトラフィックも500万以上
が記録された。

HPが支出したのは31人分のHDXだけ、25万㌦だ。Scott Ballantyneは、「結果は抜群だった」、「販売は想定をはるかに超えた」と語っている。

Source:MarketingProfs / HP Case Study (有料コンテンツ)

このケーススタディで言えること、示していることは、
  1. 広告・メディアコストなしのオンラインマーケティングが可能
  2. オンライン広告なしでもBlog社会、ニッチなターゲットグループに訴求可能
  3. ソーシャルメディアマーケティング(SMM)は既成メディア・広告を超える効果がある

  4. Web 2.0/Marketing 2.0を実験し、絶大な効果を学習する企業・ブランドが誕生
  5. マーケティング戦略に占めるSMMの重要性拡大
  6. マーケティング戦略に占める広告費削減
  7. 英語Blogによるコンテストにも関わらず、世界へ波及するSMM
たった25万㌦でHPが獲得した露出、共有、再発信、バズを、既成のオフ+オンラインメディアをどう使おうが同じ効果を獲得することは不可能だといえる。ユーザおよび選抜されたBlogger達とのエンゲージメントがなければ、これほどの効果は生起されない。ここにIBMが言う「The End of Advertising」がある。

また、この終焉は何も米国だけの話ではない。40言語、123カ国のユーザに今回のコンテスト・キャンペーンが露出している。英語コンテンツが世界で露出、消費、共有、再発信されている。米国の英語サイトから世界へ波及させることができるのだ。

そして、この終焉を実感しているのはHPだけではない。MarketingProfsのケーススタディを閲覧せずとも世界のマーケターはそれを実感している。実感できないマーケターは、この金融危機にあたり、単純に既存マスメディアの予算枠を削減するだけで、オンラインでのトレンドを理解し、実験することもない。

もう昔には戻れないのだ。マインドセットをシフトしなければならない。組織を改革しなければならない。

参考:The End of Advertising (Online Ad 2008/08/29)
参考:Global Online Barnding Presentation (Online Ad 2008/09/24)

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