2006/12/29

Lord of the Internet

メディアの主導権
イ ンターネットが急激に膨張し、多くの企業 がWebサイトを公開し始めた時、企業が初めて自前のメディアを手にしたと理解した。締め切りや、掲載料、スペースを気にすることなく、自由に世界に対し て発信してゆけるメディアを掌中にしたと理解した。情報の宝庫である企業Webサイトに世界中からアクセスを獲得し、企業を理解、認知させ、好感度や購入意思を形成させるチャネルとして、マーケティング・ブランディングで活用できると理解した。

しかし、それは誤りだった。今、 思えばメディアを手にしたのは世界中の個人だった。情報発信、共有、交換、転送、そして情報・コンテンツの再構築という面で主導権を握ったのは個人だ。そこに参加し、対話している約11億人の個人ユーザと、それを理解している一部の企業がいる。

イ ンターネットにより、個人や顧客、消費者やユーザは企業の製品・サービスの関連情報はもとより、個人やグループ、そして第三者による製品・サービスの評価、格付け情報も入手できる。客観的な競合製品の比較や、製品・サービス・サポートに不満を持ったユーザが語るクチコミ情報も知ることができる。

例えば、下はJ. D. Powerの携帯とデジカメの満足度調査だ。製品使用者の評価、あるいは客観的な競合製品の比較ができる。特に、デジカメの場合、同じブランドを将来、購入するユーザは26%にしかすぎない(2005年の調査では35%)という情報に驚かされるユーザも多いのではないだろうか。(今、使っているモデルが単に機能や使い勝手が劣るというだけではなく、購入後にもっと気に入ったモデルが別ブランドから出たということも関係しているだろうが...)
これに加えてBlogやSNSで購入予定モデルをチェックし、現実のショップで確認すれば、間違いのないモデル選択と購入ができる。

ユーザがワンクリックする先に企業が提供する以上の情報が溢れている。この現状で、企業はどのようにして情報を発信し、顧客・ユーザに消費、共有してもらえばいいのだろう?
参考:J.D.Power Conusmer Center

スタティック 対 ダイナミック 
Webページは企業にとり、言いたいこと、知らせたいこと、聞かせたいことをマスに対して発信しているが、毎日頻繁にコンテンツが更新されているわけではない。企業の生立ちから製品やサービス、最新の技術開発、IR、CSR、世界の販売チャネルなど膨大な情報が蓄積されているが、企業トップの声は何年も前のものが飾ってあるだけで顔が見えない。月に数回、テキストベースの文字情報だけを送り続けるプレスリリースはオンライン社会に露出する可能性は低く、メールアラートやRSSフィードを提供していなければ最新情報を消費してくれるユーザもいない。

企業Webは初期認知から、製品調査フェーズに入ったユーザには効果的だが、初期認知を行わせるために必要な露出は、オンライン広告、あるいは別のオンラインメディアを活用すべきだ。
企業Webサイトは顧客やユーザと対話し、初期認知を獲得するメディアとはなっていないのが現状だ

参考:DoubleClick : Influencing the Influencer

それに対して、例えばBlogを閲覧しているユーザは、毎日のように最新ニュース、データに基づいた比較レポート、分析、トピックを知ることができる。コメントを書き込んだり、自分のBlogにリンクバックしてくることで対話し、新しいトピックを生み出している。また、コメントをチェックしていれば、ユーザが送った問い合わせ・提案・苦情を知ることができ、それに対してどのような返事が出されたかを知ることができる。どのようなコメントであれ、対応しよう とするBlogger、あるいは企業Blogの姿勢、対応の中身を知ることができる。ユーザとBlogサイト間で、対話が前提とされる理解が共有されている。これは当然、特定個人Blogだ けに限った話ではなく、情報共有と対話をベースとし、増え続ける全てのオープンな参加型の企業Blogサイトにも当てはまる。

今のところ、Fortune 500の8%、40社しか企業Blogを開設してはいないが、その動きは急だ。SunのCEOなどは2年前からBlogを開設しているし、IBMなどは数 千のBlogの大半が社外に公開されている。財務情報などRegFDで現在、規制されている情報もあるが、可能な限り社内情報をオープンに公開し、企業の ステータスを伝え、新しいプロジェクトの種を植え、公正・公平な対応を元に信頼を勝ち取ろうとしている。

参考:Sun CEO's Blog

欧米企業と違い、日本のグローバル企業は、世界への情報発信量が非常に少ない。また、テキストベースのプレスリリースは欧米企業と格段に差がある。発信量が少ないうえに文字情報だけではオンラインで消費してくれない。加えて、本社発のグローバルなオンライン広告も無きに等しい。約11億のインターネットユーザにブランド認知さえしてもらえない。オンラインでのブランディングとあわせて企業Blogを開設し、頻繁に情報発信を行いユーザとの対話チャネルを構築する必要がある。

参考:E-Press Release

クローズド 対 オープン
2 年ほど前に知り合いの米国人が日本製カメラの故障修理を米国で頼んだそうだ。ところが何週間たっても修理を依頼したショップではいつ修理が終わるのか確かなことが分 からず、米国法人のWebページから問い合わせを出しても無しのツブテだった。業を煮やした彼は、日本本社の社長に直接苦情メールを出すからアドレスを調べて くれと頼まれたことがある。

企業に都合のいい話だけを既成メディアを通して流し、膨大な広告露出からブランドイメージを構築できたのは もう昔の話だ。一方通行の売りっぱなし、サポートなしのコミュニケーションや営業スタイルは死んだといってもいい。インターネットによって個人・グループが既成メディアを凌駕するほどの情報発信力および伝播力を持つ現在、顧客・ ユーザ・見込み客に企業・製品・サービスの最新情報を発信し、更新していかなければ、情報を消費、共有してもらえない。問い合わせを受けた際に、タイムリーなレスポンスを返さなければ、悪いクチコミだけが広まるのを見ているだけになる。

ちょっと古い話だが、PCの故障修理に関して不満をぶちまけたBlogから火を噴いたDellのケースが良い例だ。また、最近取り上げた、エチオピア首相を表敬訪問したStarbucksのCEOの話も個人やNGOが火元になっている。
この事件を契機にDellはBlogをモニターし始めたし、Starbucksも放って置けなくなりCEOが出て行かなければならなくなった。いかに、オープンになった情報共有、流通が企業を動かすかという証拠だ。
また、個々のニーズに対応し、的確なオープンレスポンスを返して行かなければ、企業・ブランド評価は地に落ちるということだ。

参考:Business Week / Dell : In the Bloghouse
参考:Fair Trade

ところでこのBlogを書いているBloggerの場合;
  • 合計画像ファイルサイズは300MBといっておきながら、100MBにも達しないレベルで画像がアップロードできない
    • 時間帯によってはアップロードできるが、不安定でいつアップロードできるか不明
  • YouTubeなどからのストリーミングファイルをHTMLモードで貼り付けても、作成モードで一度でもプレビューすると、embedタグが削除されてしまい保存できない
    • 保存するには毎度、embedタグを書き込まなければならない
  • レイアウトにアイテムを追加すると、編集ボタンが表示されなくなってしまい、追加編集ができない
    • そのフレームだけをオープンすることで編集は可能だが、何の説明もない
  • 度々、事前通告なしにログインできなくなる
    • 現在は改善されてはいる
などのメールを送ったが回答は来ない。
下の参考リンクにあるように企業ユース向けにBloggerの機能を強化したといったニュースを見ると、「ええ!これが企業ユース向けのアプリか?」と感じてしまい、企業が出す情報をどこまで信じていいのか分からないと思ってしまう。また、Bloggerからのレスポンスが見えないままでは、ユーザの不信感が頂点に達し、DellやStarbucksのような騒ぎになるかもしれない。

参考:InternetNews.com / Google Preps Blogger for the Enterprise

インターネットがここまで普及した現在、メディアの支配者は消費者、ユーザだ。企業が既成メディアを使ったマーケティングを行っても、プッシュ・プル型である限り、そのメッセージを消費してくれず、共有してもらえない。対話型でオープンなコミュニケーションチャネルが必要だ。

注:上の画像も10回以上、時間帯を変えて、ようやくアップできた。ということで、いつになるかは分からないが、来年はひょっとすると別のサイトに引っ越すかもしれない。

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