2006/10/26

Future of the Print Media In Europe

10月23日付けでEUから出たプレスリリースに「8 editors-in-chief of newspapers and magazines at European Commission to discuss the future of the print media」がある。

ポーランド、ポルトガル、ドイツ、ルクセンブルグ、フィンランド、ポルトガル、英国、イタリアの新聞、雑誌社のトップを集め、急増するインターネットの利用、激化するクロスメディアとの競合、拡大するフリーペーパーの影響、そして若年層の新聞・雑誌離れを背景に、プリント媒体はどのように進化すべきか、プリント媒体の将来を議論するというものだ。

2005年にも「情報社会とメディアのコミッション」が公開コンサルテーションを開催したというプレスリリースが出ている。
その時点での状況判断として、出版業界はEU25のGDPの0.5%を構成し、総売上€1,210億に達する。出版業界は64,000社、75万人の職 を支えているが、中小・零細企業が多く、250人以上の企業が業界の半分以上の売上を上げている。出版業界の中で、新聞が最も大きなサブセクターであり、 2001年には業界全体売上の36.8%を占めていた。それに続くのは雑誌などの定期刊行物が32%、書籍が24.6%だ。総売上の半分以上を占める広告売上は、総じて減少傾向にあり、特定セグメント、例えばリクルート系はインターネットへシフトしている。
だから、今後のデジタル社会の中で出版業界はどうすべきかというコンサルを開催したわけだ。

今回、EUの情報社会とメディアのコミッショナーであるViviane Redingは、「報道はヨーロッパにおけるメディアの中心、言論と民主主義の自由の基礎を成している」、「それゆえに我々はEUのプリント媒体に対する政策の影響に大きな関心を払わなければならない。報道の自由と(それを支える)強固な経済的地盤は、新聞や雑誌がマルチメディア時代に繁栄するため不可欠だ」と述べて、新聞・雑誌のビジネスモデル、広告収入、編集と広告の分離、AVメディアでのProduct Placement、また、教育や著作権も話し合うようだ。

EUでのインターネット普及はすでに大きくクリティカルマスを超えており、例えば、右の表にあるように英国の新聞発行部数は長期低落傾向に歯止めがかからない。(クリックで拡大)
そして、「Broadband for all」で紹介したように、EUは、重要なICT政策のひとつとしてBB化を強く推し進めている。また、「Free Papers Home Delivered in Europe」で紹介したように、無料の宅配新聞が拡大していく気配もある。

参考:Broadband for all
参考:Free Papers Home Delivered in Europe

これらによりプリント媒体に大きな影響が出るのは明らかで、昨年の公開コンサルをもとに、今年は、特に影響が大きいと思われる新聞・雑誌社を集め、デジタル化戦略による生き残りを後押しする、というのが真意ではないだろうか。

Source:EU Press Release 2006
Source:EU Press Release 2005
Source:ABC

さて、英国同様、下の右肩下がりのグラフが示しているように、仏の新聞有料購読部数は減る一方だ。例えば、Le Mondeの仏国内有料購読部数は、2002年に361,254部あったが、2005-2006年の中間集計では313,977部へ、13%減少している。
Le Figaroは、2002年の345,080部から2005-2006年の中間集計で321,490部へ、7%ダウン。
Liberationは、2002年の156,077部から2005-2006年の中間集計で134,789部へ、14%ダウン。
Le Parisienは、2002年の360,505部から2005-2006年の中間集計で338,240部へ、6%ダウン。
どの新聞社も率先して会議に参加し、メディアとしての地位を確保する必要がありそうだ。




































Source:OJD

にもかかわらず、どうして仏の新聞・雑誌社のトップはこのEUの会議に出てこないのだろう。
仏 新聞社のオンラインの取り組みも米・英新聞社と比べると見劣りがするというよりは、デジタル化戦略がなく、最低限の取り組みしかしていないように見える。 以前、日本の新聞のWeb2.0取り組みを比較したBivingsの調査を紹介したが、日本の新聞よりも一段、あるいは2段後れて階段を上っているよう だ。

参考:The Use of the Internet by Japanese Newspaper

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